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『致知』7月号【藤井聡】日本復興への青写真 「亡国か救国か 次のリーダーで決まる」

月刊『致知』7月号に登場されていた
藤井聡先生の記事がアップされていました。


とても読みやすいです。


国家リーダーとは
「日本の家の家長である」というたとえもわかりやすい。


橋下さんがリーダーに相応しくないのも良くわかる。

是非ご覧ください。↓

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月刊『致知』7月号  特集/将の資格
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/index.php/b4/job/166-aosyasin


近い将来、必ず起こるといわれる都市直下型地震と、東海・東南海・南海連動地震。ここで壊滅的な破壊を受けたら、日本は本当に滅亡してしまうかもしれない。東日本大震災からの復興と並行して、国土の強靭化を図る必要性がある。「日本列島強靭化計画」を提唱する藤井聡氏に、計画の内容とそれを牽引するにふさわしい「リーダーの資格」をお話しいただいた。



日本復興への青写真

京都大学大学院教授 藤井聡



日本に必要なのは

青写真とリーダー

「これで戦後を終わりにしなければならない」

それが昨年の東日本大震災の時、

私の胸に去来した思いだった。

敗戦によって焼け野が原になった日本は、挙国一致で奇跡的な経済成長を遂げた。しかし、一方で六年八か月に及ぶ占領下で「国家」としての背骨を骨抜きにされ、その影響が様々な形で表れていた。

安全保障の脆弱さ、教育の廃頽、長引く経済不況……例を挙げればきりがないが、誰もが「日本はこのままではだめになる」と思っていたはずだ。

そこに訪れた巨大地震。弱り目に祟り目とはこのことなのか。それとも、ここで“戦後”を断ち切り、再び挙国一致で、本当の意味での日本再建がなされるのか。東日本大震災は、その分水嶺だと思ったのである。

それから一年が経つ。いくらなんでもここまで復興が遅れるとは思っていなかった。国民は瓦礫の受け入れを拒否し、しばらくすれば震災関係の報道もなくなり、政府も申し訳程度の予算しかつけない。自己中心、事なかれ主義、経済最優先、そしてとりわけ強く憤りを感じるのは、国家リーダーたちの不道徳と感じるほどの不手際である。これは戦後六十五年の膿が一気に噴き出した格好ではないだろうか。

さらに、東日本大地震以来、極めて高い確率で十年以内に発生するであろう首都直下型地震、さらに二十年以内に発生する可能性の高い東海・東南海・南海連動型地震について情報が飛び交っている。

ある試算によると、今回の東日本大震災による経済損失はGDPの三~五㌫だったが、首都直下型地震ではその半分か、それ以上に及ぶことも考えられるという。凄まじい混乱に陥ることは想像に難くない。

しかし、日本の歴史を振り返れば、天災を含め、幾度も見舞われた大きな逆境を乗り越え、立ち上がってきた。

逆境から立ち上がるにはビジョンと、それを牽引するリーダーが必要である。なぜ戦後、あれだけの短期間で復興をなしえたかと言えば、そこにビジョンがあり、人物がいたからだ。

吉田茂が独立を回復し、後に続く池田隼人が「所得倍増計画」の一環として「太平洋ベルト構想」を掲げた。それによって東京、名古屋、大阪を中心とした太平洋沿岸地帯が栄え、高度経成長に寄与した。一方で地域間落差が広がり、これを是正するため田中角栄が「日本列島改造計画」を掲げて、新幹線を引くなどの地方への公共投資を行った。そしてそれらの計画を受け、執行する優秀な役人もいたのである。

いま、日本には先を見据えた青写真が必要だ。東日本震災直後、私は「日本列島強靭化計画」をつくった。これは日本が今後大地震に見舞われ、少なからず打撃を受けても必ず立ち上がるための、そして停滞した経済を打開するための「救国計画」だと思っている。



列島強靭化計画で

GDPが九百兆円に!?

では、何をもって「強靭化」とするのか。

それはどんな大地震が来ても、

① 命傷を避け

② 被害を最小にし

③ すぐに回復する

ことを定義している。

先に首都直下型地震の経済損失を述べたが、東京がやられれば、下手をすれば政府や霞が関などのほとんどの国家機能を失い、最悪のことを考えれば皇室まで失うかもしれないのである。これは本当に致命的である。そうならないために次の八つの対策を十年がかりで行っていくのである。

一、「防災・減災」のためのインフラ対策

三大都市圏をはじめ、激しい揺れが予測される地域のビルや家屋、学校や橋などの耐震性を高めていく、地道な取り組み。防潮堤の整備なども含む。国会や中央官庁、皇居などの破壊を防ぎ、致命傷を避けるために不可欠な対策。

二、リスク・コミュニケーション

防災教育。子供だけでなく、大人や行政や政治に携わる人たちも含まれる。

三、「地域コミュニティ」の維持と活性化

災害に際しては地域コミュニティが濃密に存在していることが重要(首都圏では極めて希薄であることが懸念される)。

四、有事を用意した「強靭なエネルギー・システム」の構築

原発等の個々の発電施設の耐震性を最大限高めながら、電気、ガスを組み合わせ、エネルギー供給システムを単一ではなく、二重化、三重化のシステムをつくる。

五、企業・工場の「BCP」の策定と義務化

「BCP」とは、「ビジネス・コンティニュイティ・プラン」の頭文字で、大地震が来た時にそれぞれの企業や工場がどうやって事業を続けていくか、予め想定しておく。

六、有事の際の「救援・復旧対策」の事前想定

誰が、どうやって救援活動を行うのか、その判断を誰が行うのかを事前に決めておく。行政版「BPC」ともいえる。異なるのは道路のインフラ整備など、大規模な公共事業を織り込んだ計画となる。

七、日本全体の「経済力」の維持・拡大

デフレ不況が深刻化し、GDPが五百兆円を割るような事態になったところに、超巨大地震が発生すれば大打撃である。GDPを拡大しておくことも大地震を乗り越えるための基盤となる。

八、「強靭な国土構造」の実現

地震や津波の被害の大きそうなところのいろいろな機能を、被害の小さそうなところに移転させて、分散型国土をつくる。

詳細は私の著作などを参考にしていただけたらと思うが、日本列島を強靭化するために必要な予算を想定すると、少なくとも百~二百兆円になるだろう。これを十年かけて行うわけだから、年予算にすれば十~二十兆円になる。

「ただでさえ日本は財政が厳しい状態なのに、どこにそんな金があるのか」と思う方もいるだろう。

私に言わせれば、だからこそ日本列島強靭化計画を実行するのである。つまり、国債を発行し、建物やインフラの耐震補強や国産エネルギー開発、新幹線や鉄道、道路の整備など、先に述べた八つの取り組みに対して「公共投資」を行うのだ。

マクロ分析モデルの第一人者である宍戸俊太郎先生によると、現在日本で行われているいくつかの経済分析では、「一㌫(約五兆円)の公共投資を行った場合、GDPはどの程度増えるか」を試算すると、五年後に一・五~三・五㌫増えるという結果になる(内閣府だけは減る試算になっている)。

それに照らせば、毎年十~二十兆円の公共投資を十年続ければ、単純に計算すると日本のGDPは少なくとも六百兆程度、試算によっては九百兆円になると出ている。

そうなれば、大地震での経済損失をカバーできるばかりか、財政の問題、税収の問題、企業倒産の問題……現在日本が直面する問題もクリアできるのである。



国家リーダーとは

日本の家の家長である

この「日本列島強靭化計画」は、別の角度から言えば「都市部への一極集中と地方の疲弊」を是正するものであり、民主党が掲げる「コンクリートから人へ」という政策と真っ向対立する計画である。

仕事上、地方に足を運ぶことが多いが、小さな地方自治体の疲弊ぶりには目を覆いたくなる。

日本国家を一つの家としよう。国家リーダーはこの家の家長である。私は立派な家長には大きく四つの特徴があると思う。

まず家族には体が大きい子、小さい子、元気な子、ひ弱な子、頭のいい子、悪い子……いろいろな子供がいるが、そのすべての存在を慮るのが家長の役目である。

例えて言うなら、被災地は大けがをした子供だ。ダラダラ血を流しながら助けを求めている子供を放置したり、「助けてやりたいけれどなぁ、お父ちゃん、お金ないんだよ」と言うのは、立派な家長ではないだろう。

同じく、財政に苦しんでいる地方自治体はガリガリに痩せ細った子供といえる。長男の東京君や続く名古屋君、大阪君は最初にたくさんの栄養をもらい、成長の基盤を整えてもらった。次は地方へという段階になって政策を転換し、「公共投資は無駄」、「コンクリートから人へ」など言い始めた。

挙句、費用対効果を持ち出し「地方に新幹線を引いても、利用者が少ないから利益が出ない」などと言う。小さな子供が「寒い、寒い」と泣いているのに「おまえなんかに金をかけるより、できのいい東京君に使ったほうがましだ」と言って、服を着せてやらないのと同じで、慮りのかけらもない。

そもそも「コンクリートから人へ」は、財政の構造を地方から都市部へシフトするための政策である。いまコンクリート(公共投資)が必要なのは地方であり、人がたくさんいるのは都市部である。

そしてもう一つ、そのスローガンは「未来からいまへ」という,至って利己的な転換でもある。

道路なり堤防なり、すべては未来への資産だが、人にかかる社会保障はすべていま消えてなくなるものだ。未来への投資を控えて今のためだけにオカネを使う,そんな風にして子孫を無視する家長が立派だ言えるのだろうか.

そもそも一族を豊かにし、より繁栄させたいと願うのが家長である。国家で分かりやすく言えば、GDPを増やすことである。そのための公共投資への布石を打たず、有権者の機嫌を取るために社会保障として財源を使い果たしては、一族の永続的な繁栄は望めない。

家族を慮り、先の子々孫々を思い、そして一族の繁栄を願う。そのベースがあって、ご近所から一目置かれる存在となるのが立派な家長というものだ。盗人猛々しいお隣が、ある日突然「ここは俺のうちの敷地だ」と言い始めて、子供たちが「怖いよ、怖いよ」と言っているのに、盗人の機嫌を取る家長は立派だと言えるのか。

別のご近所さんに「TTPに入りなさい」と言われ、東京君や大阪君は「よっしゃ、いっちょやったるで」と意気込んでいるが、地方の小さな子供たちは「お父さん、絶対やめて。僕たち死んじゃう」と泣き叫んでいる。この現実を無視して、加盟しようとするのが立派な家長のすることなのか。

国家リーダーは国の家長。そういう視点でいまの日本の家長を見ると失格だと断ぜざるを得ない。



亡国か救国か

次のリーダーで決まる

先に述べたように、近い将来首都直下型地震、東海・東南海・南海連動型地震はやってくる。いつまでも「コンクリートから人へ」などと言って、公共投資を拒んでいては大変なことになる。二度と東日本大震災の悲劇を繰り返してはならない。自然災害の被害は致し方ない部分もあるが、一年も放置されるようなことがあってはならない。打撃を受けてもすぐに立ち上がれる、そんな強靭な国家にしなければならないのだ。

いま、東北復興に関しても現地からの声を聞くことがある。私はまずもって復興庁は仙台に置き、岩手や福島に支庁を置くべきではなかったかと思う。霞が関は窓口ぐらいでいいだろう。そして復興庁は被災者の方を中心に雇用し、さらに役人、民間人、学者など、たくさんの人に出向してもらい、徹底的に議論をする。復興庁長官には「家長」にふさわしい人物を据え、大きな権限を与え、次々と決済を進めていくべきだ。

いま復興が遅れているのは、圧倒的に行政機構の職員が足りないことも大きな原因の一つだという。瓦礫処理一つに関しても、たくさんのアイデアはあるが、行政能力のキャパシティが限界を超え、執行できていないのだ。決済し、執行できる量を増やす。これがいま行政面から見た東北復興のために一番必要なことと言える。

東日本大震災以来、日本はずっと国家的非常事態が続いているといっていい。幕末に黒船来航から開国、明治維新という国家的非常事態を先人はどうやって乗り越えたか。各藩バラバラに動いていたものを、挙国一致、中央集権体制を築いたのである。いまも同じだ。声高に「地方分権」を叫ぶ首長もいるが、いまこの状態で地方分権をしたら、間違いなく日本は滅ぶ。

サッカーチームを考えればわかるだろう。個々のメンバーが個別に作った別々の作戦で好き勝手に動いていたら絶対に勝てない。徹底的に集権をし、強力な求心力で一つ作戦をたて,その上でその範囲の中で最高の自由な個人芸を発揮するチームこそが強いのだ。

よって、これからの日本のリーダーは「オールジャパン」体制をつくれる人でなければならない。そして家長として家族全員を慮り、一族の永続的な繁栄を願い、近隣諸国と健全に付き合える関係を築ける人でなければならない。

「そんな人、いまの政治家のどこにおるん?」

多くの国民はそう思うだろう。しかし、私は「まともなリーダーがいない」という国民の根性が日本をつぶすと思う。理想のリーダーなどいないのだ。そんなリーダーは,「白馬に乗った王子様」のような単なる幻想にしか過ぎない.欠点もあるだろうし、ミスもするかもしれない。しかし日本のことを心底思い、私利私欲なく公に身を捧げられる人は絶対にいると思う。少なくともそういうイメージに「少しでも近い人」にリーダーになってもらって,後は全力でその人物を応援するのだ.

いずれにしても次のリーダーが誰かによってこの国の運命が決まる。ここで国民がリーダー選びを間違えば、本当に日本はなくなるかもしれない。

有史以来、滅んでいった国はたくさんある。日本も例外ではない。

日本国民が、列島強靭化を含め明るい未来につながるリーダーを誕生せしめることができるか否か。その一点が救国か亡国かの分岐点なのである。


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